なぜ聖路加に人が集まるのか(著:福井次矢)
「なぜ聖路加に人が集まるのか 医療の質、医者の資質」(著:福井次矢)を読みました。
聖路加国際病院の院長による本となっています。
病院ランキングなどで上位に出てくる同病院に関してと、日本の医療現場全般に対しても意見を述べています。
特に医療に対する意見の部分が多いため、タイトルとの乖離が大きく感じます。もっとも、最近の本のタイトルは目を引くことを重視し、タイトルから内容を把握するのが困難であることが多いですが。
まず、今の日本の医療教育に関しての問いかけをしています。18歳の段階で医大に行くかどうかを決め、あとはそのまま医師になるまで勉強することが良いのかどうかという考えです。特に、18歳といえばまだ子供の年齢で将来を決めることは、結局は親や学校教師の意向が強く、本人のためになっているのかという指摘がありました。
また、その時の理系の教科の成績が良いからといって、必ずしも医者に向くわけではなく。最終的には患者や同僚などとのコミュニケーション能力が大事なのではないかとのことです。
聖路加病院は差額ベッド代が高いことでも知られているようです。安い部屋でも3万円以上の差額ベッド代がかかります。では、なぜそうなるのかという話も書かれています。医療の質を維持するには、経営を黒字にしなければならない。そのためには、患者側にも負担してもらう必要性が説かれています。
ですが、最近ではモンスターペイシェントという問題もあり。無理な要求をする人だけでなく、医療費すら払わない人が多いとのこと。
この聖路加国際病院でも5600万円分、年間で未払いがあるとのことで、病院側の負担の大きさが窺えます。未払いの人は、その後高級車で帰っていくとのことで、人としてのレベルの低さが見て取れます。
このようないろいろな医療関係の問題を取り上げ、また、聖路加国際病院ではどのような対応をとっているのかを紹介し、また、考察しています。
医学の道に進みたいと思っている学生や、その親族、良い病院選びをしたいと思っている人、すでに病院で働いている人などは一読しておくとよいでしょう。