THE大市民 全5巻(著:柳沢きみお)

「THE大市民 全5巻」(著:柳沢きみお)を読みました。

「大市民」シリーズの3作目に当たります。

今回は原宿から世田谷の砧に引越し、装いも新たにスタートします。

当然、登場人物は主人公の山形鐘一郎以外、一新されます。

ただ、ここでも初代から登場している佐竹さんは登場。

未消化のキャラクターもおり、同じアパートに住んでいる一人の女性がいたものの、結局語られずじまいになっていたのは残念なところです。何かしら、話のふくらみを持たせられる可能性があっただけに、話に絡めてほしかったです。

面白エピソードも多く。

パーティーで多くの人が寿司やローストビーフに押し寄せるというのは、よく見かける光景で、それが描かれていたのは良く見ているなと感心。

また、同じアパートにすむ一人の教師が引きこもりになったために、勝手にその教師の学校に行き、人生について語ったりという、金八先生のようなエピソードもあります。

最終巻の最後の方には、漫画家との話の中で現状の漫画業界を嘆いている姿もあります。

この本が発売されたのは2003年1月から2004年12月ですが、まさに5年後の今の状況を的確にとらえた発言になっています。

他にもパソコンの登場によって情報の渦に飲み込まれることの危険性も訴えており。

時折トンチキな発言があるものの、一つ一つの言葉に考えさせられる部分が多い作品です。

特に、以前の2作品よりかは、最近に発売された本ですので、ITバブル以降の状況を知るには適した本となっています。

ぜひ、機会があればご一読を。