蟹工船・党生活者(著:小林多喜二)

「蟹工船・党生活者」(著:小林多喜二)を読みました。

「蟹工船」は、ここ最近、といってもちょっと前からではありますが、流行語のように使われている言葉として知っている人は多いのではないでしょうか。

「党生活者」は、その「蟹工船」と同じ文庫に収録されている小説となります。

「蟹工船」は現在の就職難であったり若者の派遣社員などの労働環境に類似しているかのように報道されています。

では、実際にどうかと見てみると、決して類似しているとは思えず。

あらすじとしては、資本家に雇われ、船に乗って蟹を取っていくわけですが、労働者の扱いが悪く、最悪殺されたりしながら労働を強いるというないようです。賃金も安く、過酷な労働の中、労働者が結託してストライキをしたりして対決していきます。しかし、最終的には資本家と結託した海上警察に首謀者数人が捕まり、終了という内容。

とりわけ派遣社員がこの状況と類似しているかのように報じられますが、別に強制されてやっているわけでもなく、いつでも派遣社員を辞めようと思えばやめることが出来ます。決して命をとられているわけではないのですから、あとは本人の意思次第といったところでしょうか。

もちろん、地域によってはどうにもならない状況の場合もありますが、逃げられる、という点では蟹工船の状況とはまったく違うといえるでしょう。

状況の類似によって、最近の若者に受けているというような話がありますが、ちょっと眉唾物です。そっち方面の人が現状を意図的に曲げて報じようとしているのかと穿って見ることも可能です。

そもそも、読んでみたところ、決して若い層が容易に読める内容とも思えず。普段本を読んでいる身でも、かなり苦労して読み進めることになりました。小説好きであれば若い方でも気軽に読めるのかもしれませんが、少なくとも今までまともに学んでこなかった層が手に取り、読み進めていることは想像できません。

逆に、普段本を読んで自らを学ぶ環境においている人であれば、そうそう蟹工船のような状況に陥らないと思いますし。いないともいいませんが。

話代わり「党生活者」にも少し触れておきます。

あらすじとしては、工場で臨時工として働く人が解雇されることに反発するような内容です。賃金面でも恵まれておらず、そうした思いを持っている人を集めて団結していく姿が描かれています。

最後には結局意に沿った結果にはならなかったのですが、芽は蒔かれた、というような終わり方で前編終了となっています。

では、後編があるのかというと、存在せず。

著者の小林多喜二は逮捕され、獄中で亡くなり、この「党生活者」が遺作となりました。

全部で270ページ程度、「蟹工船」だけなら140ページ程度です。流行語となっているため、どういったものかを知るために読んでみるのもよいかもしれません。ただ、残虐な描写もあるため、そういったのが嫌いな人にはお薦めしませんが。