子宮、応答せよ。筋腫警報発令中(著:得能史子)
「子宮、応答せよ。筋腫警報発令中」(著:得能史子)を読みました。
2006年から2007年に発売されたコミックエッセイ『まんねん貧乏(著:得能史子)』のシリーズ2巻以降、一向に新刊が出ず、2010年4月に久しぶりに出た新刊がこの本。
先に2010年12月に発売された『ペリーさんちの、おきらく貧乏ごはん(著:得能史子)』を店頭で見たため、さきに貧乏ごはんを先に読み、そしてネットで調べていたらもう1冊出ていたということで、この本を購入。
貧乏系3冊のコミックエッセイでは明るい姿を振舞っていた著者ですが、一転、まったく真逆の話になっており。
著者自身の性格は大きく変わってはいないのですが、病気、そして入院して手術という話のため、比較的重い話になります。
子宮にできる子宮筋腫という病状は、多くの女性が抱えている問題で、筋腫自体は珍しくないようです。しかし、得能史子さんの場合は症状が重く、普段の生理でも出血が止まらないなどの状況が続き。重い人用の生理用品を使っていても、血が溢れ、外出先などでもそうした症状になることがあったようです。
そうした生活をしていた中、検診の話が来て、検査しに行ったら、子宮を切除しなければいけないという話になり。
そこからこのコミックエッセイの話が始まります。
過去の出来事や、夫であるニュージーランド人のペリーさんの気持なども描いており。
特にペリーさんは漫画内では変な外国人というイメージで描かれているものの、実際の心の中ではいろいろと抱えているものも多く。
血が止まらず風呂場で立ち尽くしている著者を見て、普段は涙しないペリーさんが泣いている件や、酒を飲みすぎて警察の厄介になった後に述べた、飲みすぎた理由のストレスという言葉。本人のつらさはもちろんではありますが、身近な人への問題にもスポットを当てています。
子宮を切除すれば、当然子供も産めなくなります。また、産む産まないの話だけではなく、体の一部を切除するということ、特に女性としての特徴的な部分の切除に対する深い思い。
そうしたものを個々に考えさせられます。
男性は当然生理なども分からないでしょうし、女性も軽い人からすると重い人の気持ちがわからないでしょう。
しかし、こうした本により、実態の一部を知ると、安易に生理休暇を取る人に対して乱暴な発言をしたり、また、体調が良くない理由を把握しないままに怠けているといった考えを持つことの危険性をうかがい知ることができました。
ほかにも、無自覚で述べる子供を産まないの、という発言に対しても、慎重さが求められることを実感。産む産まないの選択肢ができるのであれば、まだ別ですが、できない人もいるということを再認識する必要があるでしょう。
得能史子さんの作品は比較的明るい作品が多く、絵柄もかわいらしいデフォルメの絵が多かったのですが、この1作だけは普段の作品とのギャップが大きすぎ、涙なしでは読むことができませんでした。
女性はもちろん、あまり関係ないと思っている男性も、一読してみてはどうかとお薦めしておきます。